2011年3月10日木曜日

賃貸住宅 その3

3)シェアハウス

人は1人では生きていけない、と良く耳にする言葉がある。
これは前回の調査結果で裏付けできるかもしれない。(精神が病んでも生きてはいけると曲がったことを言う人もいると思うが)
やはり別の誰かと共存しながら生活することは人が人である以上とても重要なのだ。

さて、日本は賃貸住宅にくらべて持ち家に住む割合が多い。
この持ち家の多くは親と子もしくは老夫婦といった血縁で結ばれた最も近しい関係の人たちが暮らしていることだろう。

こういった日本の家はSOHOのような自宅でもあり仕事場でもある建物じゃない限り、なかなか外部の人が出入りすることはないように思う。
ヨーロッパでは集合住宅の賃貸が当たり前で、土地・建物を他者と共有するこの住まいと比べると日本の持ち家は共有という余地がなく、とても閉鎖的だといえる。

日本にも集合住宅はあるが、こういった他者と住まいを共有しないという考えが根底にあるから、同じ建物内にいても自分の部屋から外に出たらそこは「外」と思ってしまう。だから欧米に比べて他の居住者とコミュニケーションが少ないのではないだろうか。

それはさておき、一方で最近「シェアハウス」という家族でもなく恋人でもない「他者」と一緒に暮らす住まいの形が増えてきている。
一人暮らしでは使えない広いリビング・キッチンなどの設備などが共同ながらも使え、他の居住者との交流が魅力なようだ。

そもそも持ち家という住まいは戦後の持ち家政策により増加したもので、
もともとは借家が多く、江戸時代にさかのぼれば長屋と呼ばれる町人が住む共同住居にたくさんの人が暮らしていた。
またこの長屋の居住者は「家族」ではなく、町人「個人」の集まりだった。

学者の広井良典は自身の著書で、
「農村型コミュニティ」(家族や会社などの共同体)
「都市型コミュニティ」(独立した個人と個人のつながり)
という2つのキーワードをあげ、これからの時代はこの両者のバランスが大事だという。

これのコミュニティの分類を日本の住まいに当てはめると、
戦後の持ち家とは閉鎖的な「農村型」の住まいであり、
江戸の長屋は個人と個人がつながる「都市型」の住まいである。

さらに長屋は結果として一つ屋根の下で生活を共有するため「農村型」の住居でもあり、いうならば広井のいう両者のバランスを保った「ハイブリッド型」の住まいだったと言える。

一方シェアハウスはというと、これもまた血縁の関係ない「個人」が集まって共に生活をする、まさに長屋を先祖帰りさせたような「ハイブリッド型」の住まいなのである。

果たして今後、このような住まいの選択肢が増えていくのだろうか。

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